ふくらはぎの女(ひと)【完】
「お母さん、失敗なんか
してないもん。
お別れはしちゃったけど、
潤一郎さん、大好きだったもん。
娘子ちゃんも、産みたかったもん。
産んでやっぱり、うれしかったもん」
どんぐりのように茶色い目。
母似の私の目の色も同じように茶色い。
今日初めて目と目を合わせた、
四つのどんぐり。
「お母さんは幸せだもん。
潤一郎さんは殺そうとしたんじゃない。
弱虫だけど、優しい人だもん。
ただ今は、どうしようもなく苦しいだけ。
お母さんと娘子ちゃんと離れ離れに
なった事が辛いって、泣いてたもん」