ふくらはぎの女(ひと)【完】
(5)
母の葬儀の数週間後、私が子供の頃
一時期母が勤めていた
飲み屋のママから
電話がかかってきた。
「潔子さんもアレよね。
女手一つで娘子ちゃんを
育てて来たから・・・
置いていくのはずいぶんと、
心残りだったんじゃないかしらねぇ」
「はぁ・・・」
まだ母が亡くなった事に対する
実感も湧かず、
何を思う気にもなれず、
ぼんやりとした頭のままで
ロボットのように私は答えた。
しかし、そんな事には
おかまいなしで、
捲くし立てるようにママは続けた。
「ねぇ、ところで娘子ちゃんは今
おいくつなの?」
「・・・二十四になりました」
「まぁ!ご結婚は?まだ?」
「・・・はぁ」
「あらぁ・・・そうなの・・・
孫の顔も見せないでねぇ
・・・それはとっても親不孝な事よ?」