ふくらはぎの女(ひと)【完】

しかし、よくよく思い返せば

確かに母は何かにつけて、
 
「娘子ちゃんが結婚したら」

とか

「赤ちゃんを生んだら」

とか言っていた。
 

母は、私の花嫁姿が

見たかったのだろうか。
 
孫が抱きたかったのだろうか。

たぶんきっと

そうだったんだろう。

口に出した事は

一度もなかったけれど。


飴色のふくろうを

中指にはめたまま、

私はゆっくりと

両手で自分のお腹に触れた。

< 44 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop