ふくらはぎの女(ひと)【完】
(6)
『ふくろう箱』を閉じ、
再び押し入れ内の
片づけを始めると
玄関のチャイムが鳴った。
「・・・あれ?
仕事、もう終わったの?」
ドアを開けると恋人の邦男が
仕事帰りの警備服姿で
立っていた。
「今日は早く終わったんだ。
現場も近かったし・・・
病院、まだ行ってないだろ?」
「うん。相変わらず全然
片付いてないから、
もう少し整理してから
行くつもりだけど・・・」
なんで来たの?と
聞くのもおかしいし
待っていたのよ、と
言うのも変だ。
コップに麦茶を注ぎ
手渡すと、
喉を鳴らして
一気に飲み干した。
「せっかく仕事上がるの
早かったし・・・それに、
なんか落ち着かなくてさ。
顔見に来たんだ」