ふくらはぎの女(ひと)【完】
「驚いたよ、すごく」
「私もだよ。それに、
ちっとも実感ないもん」
邦男とは、
つきあいだして四年経つ。
二つ年上の彼は、
とても穏やかで真面目な人だ。
母も邦男の事が好きで、
デートの帰りなんかに
家に連れて帰ると
いつも喜んだ。
ある時コーヒーを出しながら
母は邦男の顔を
じっと見つめて唐突に言った。
「邦男君ってね、
見れば見るほど
お母さんの実家で昔飼ってた
スピカに似てるわぁ」
一瞬きょとんとした邦男は
私と顔を見合わせ、
それから母に尋ねた。
「スピカって、なんですか?」