ふくらはぎの女(ひと)【完】
ふふふ、と嬉しそうに
笑いながら母は
キラキラっと
音が聞こえそうな
明るい表情で答えた。
「オスのハムスターよ。
きれいな色の。
茶色のような
グレーのようなね。
毛並みがよくて
性格がよくて
頭もよくて、
うんと長生きしたの」
「はぁ・・・あの、僕と
どこら辺が
似てるんですか?」
「そうねぇ・・・まず、
全体的なムードね。
あとは目元がよく似ているわ。
スピカは、とっても
ハンサムだったのよ?」
「はぁ・・・・・・」
そうなんですか、と
困って答える邦男と
大真面目に彼を
絶賛しているつもりの
母の姿が
あまりにも面白くて、
私は何度もコーヒーを
吹きそうになった。