ふくらはぎの女(ひと)【完】
へんてこな、
お気に入りの
おしゃれをして
あちこちに出かける事が
大好きな人だったから
毎日同じシンプルな
水色の入院服を着て
暮らす日々を
過ごしていた事
一つだけでも、
母の体にとっては大変に
不健康な状態だったんじゃ
ないかと思う。
「早くお家に帰りたいな。
ねえ娘子ちゃん。退院したら、
一緒にどこか旅行に行こうね」
「何かおいしいものを、
どこかで一緒に食べようね」
病院の売店で買ってきた
旅行雑誌を眺めながら
テレビのグルメ番組を観ながら。
母は私にたくさんの
約束をとりつけた。
入院期間が
長引けば長引くほど、
様々な約束が
どんどん増えていった。