ふくらはぎの女(ひと)【完】

へんてこな、

お気に入りの

おしゃれをして

あちこちに出かける事が

大好きな人だったから

毎日同じシンプルな

水色の入院服を着て

暮らす日々を

過ごしていた事

一つだけでも、

母の体にとっては大変に

不健康な状態だったんじゃ

ないかと思う。


「早くお家に帰りたいな。

ねえ娘子ちゃん。退院したら、

一緒にどこか旅行に行こうね」

「何かおいしいものを、

どこかで一緒に食べようね」


病院の売店で買ってきた

旅行雑誌を眺めながら

テレビのグルメ番組を観ながら。


母は私にたくさんの

約束をとりつけた。

入院期間が

長引けば長引くほど、

様々な約束が

どんどん増えていった。

< 54 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop