ふくらはぎの女(ひと)【完】
病院を出ると、
外はすっかり日が
暮れていた。
青っぽい紫の空。
吹く風はさらさらと、
柔らかい粉のように
肌をすべる。
心地よかった。
邦男が待っている
本屋に入り姿を探すと、
普段はパソコンコーナーに
必ずいる彼が
結婚・妊娠・出産本の
コーナーで
何やら真剣に
立ち読みをしていた。
私は思わずほほえんだ。
少し離れたこの場所から、
永遠にあの立ち読み姿を
眺めていたい。
けれど。
私は邦男の背後に
ゆっくりと近づき、
腕をつついた。