ふくらはぎの女(ひと)【完】
(8)
「お待たせ」
「わ、びっくりした!」
小声のやりとり。
振り向いた邦男が
手にしていたのは
『赤ちゃんの
名付け辞典』
だった。
ちくん、と
胸が痛んだ。
「お帰り。・・・どうだった?」
一呼吸置いて、
私は答えた。
「いなかった」
「えっ?」
「赤ちゃん、
いなかったよ。
私の勘違い。
妊娠してなかったみたい」
「・・・・・・そうなんだ」
「うん」
「そっか」