ふくらはぎの女(ひと)【完】
やがて邦男の体は
つかんだ二の腕の辺りから
すかすかの体の中まで
じんわりと広がり、
その言葉と一緒に
私を柔く温めてくれた。
「・・・娘子?」
温かい手のひら。
その、広さと大きさ。
「どうしたの?」
突然泣き出した私の顔を
心配そうに覗き込む邦男。
・・・・・・・・・私は。
失った、大きな存在を
埋めるために
自分でも
気がつかないうちに
子供を欲しがって
いたのだろうか。
たった一人きりの、
大切な大切な
家族を失って。
私はそんなにも、
新しい命を
望んでいたのだろうか。