ふくらはぎの女(ひと)【完】
「お母さんもね、
冷え性だから手足の先は
凍るくらいに冷たいの。
でもほら、」
うんと小さい頃。
まだ母と一つの布団で
一緒に寝ていた頃。
真冬の夜、
足が冷たくて眠れないと
愚図る私の両足を、
母は自分のふくらはぎの間に
ぎゅっとはさんで
暖めてくれた。
「こうすれば、ね?
あったかでしょう。
娘子ちゃんの足が
温まって眠くなるまで、
お母さん
ずっとはさんでてあげるからね」
とろりととろけていくように
眠りに落ちる瞬間、
ほほえむ母の頬の丸さと
胸元の匂いをおぼえている。