ふくらはぎの女(ひと)【完】
私はこの部屋に、
母と二人で十五年
暮らした。
ヘビ柄のような
不気味な模様の柱。
せまい台所の
きしむ木の床。
突然、
びっくりするほど
冷たい水が出る
おんぼろシャワー付きの
お風呂。
びんぼうくさい外観の
古いアパートの一室だ。
「特に高校生の頃は、
ほんと嫌だったよこの家」
「なんで?」
「ぼろいから。
男の子に家まで
送ってもらうのとかも、
恥ずかしくて
断ってたくらい」
「ひでぇなぁ」
邦男が笑いながら言う。