ふくらはぎの女(ひと)【完】
「家って、雨風凌げりゃ
立派なもんじゃん。
娘子が大きくなるまでは
お母さんが一人で働いて
頑張って守り続けた家だろ?」
「ね」
ほんとにね。
文句を言いながらも
十五年間
私はこの場所に
ずっと守られてきたんだ。
外でどんなに
嫌な事があっても、
悲しい目にあっても、
ここに帰ればそれだけで
ホッと心がゆるんだ。
毎日毎日、ここに帰れば。
家があり、母がいた。
いつも。
「ねえ邦男」
「ん?」
黙々と手を動かしながら、
私は尋ねてみた。
「赤ちゃんいなくて、
どう思った?」