ふくらはぎの女(ひと)【完】
「何言ってんの?
そんなわけないじゃん」
私は。
あの時母に返した言葉、
発したタイミング、
そして自然な笑い顔。
それらを全て合わせて
今でも自分を尊敬している。
自画自賛できるくらいの
一世一代の大嘘をついた
あの日の自分を。
でも本当のところはわからない。
母は私の言葉に
安堵の表情を見せはしたけれど
「騙されてくれた」
だけなのかも知れないから。
「母親」という生き物は
自分の子供がつく嘘になんて
簡単に気づくものだと
私自身も知っていたから。