AKANE -もう一度、逢いたい-


貴之は部室をあとにした。

室内には二人だけが残された。


蒼次はさっさと帰る準備を整えていた。

そんな蒼次に陽平は思わず声をかけた。


「なぁ、蒼次」

「ん?」

「貴之ってさぁ、いつも
貰う物をいらないって言うよな」

「あぁ、いつものことだろ」

「貴之になんかあるわけ?」

「知らなかったっけ?」

「あぁ」

「やっぱ、
忘れられないんだな」

「忘れられない?」


陽平は蒼次の横に興味津々に座った。

目が輝いていた。


「…『初恋の女の子』」

「誰それ?」

「知りたい?」

「そりゃ、知りたいよ」


蒼次の優しい笑顔は悪魔の微笑みへと変わっていく。



~10年前~

それは貴之と蒼次がたったの6歳だった時。


あの時、俺は幼稚園にある大きな木の後ろで貴之が女の子と話しているのを盗み聞きしていたんだ。


小さい頃によくある驚かしてみようっていう感覚だった。

その女の子は当時、貴之ととても仲の良かった女の子だった。


「…あかねちゃん、スキだよ」

「うん。あかねも
たかゆきくんのことスキだよ」


小さかった俺でも分かった。

2人のその言葉を聞いたら登場しにくかった。

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