AKANE -もう一度、逢いたい-
俺は茜を連れて保健室へ向かった。
茜がこんなにも取り乱して、我を失うところを見たのは初めてだった。
彼女に何があったのか気になるけれど分からない。
分かるのは彼女の辛く、忘れ去りたい過去が両親に捨てられたり、母親との辛い日々だけじゃない。
中学時代にあったと思われるいじめか何かだろう。
そして、いつもダサい格好をしていたのは醜いとバカにされた容姿を見えなくするため。
気付かれないようにするためだった。
自然と表情は消えてしまったのかもしれない。
そして茜が最後につぶやいた言葉。
『嫌いにならないで』
誰に向かって言った言葉だったのか。
誰に嫌われたくなかったのか。
…誰ならお前を救うことが出来るのか。
俺はお前を嫌いにならないよ。
ずっと傍にいてやる。
お前を守るって約束しただろ。
だから…
「だから、
こっちを見ろよ」
俺の心は痛くて、泣きそうになった。
やっぱり彼女の大事な人は他にいて俺じゃない。
「きっとそいつの前だと
涙を流すんだろうな」
そっと頬に触れる。
あんな状況でも泣かなかった茜の過去は重く、深いに違いない。