AKANE -もう一度、逢いたい-



「例えあたしが出たとしても、ブサイクだからどっちみち迷惑になるの」

「出ないよりはマシだろ?」

「あっそ。貴之は
あたしに恥をかけと言うの」

「そういうことじゃあ…」

「最悪だね」


茜はまだ病み上がりなのに、ドアを大きな音を立てて飛び出した。


「やっちまったな」

「…うるさい」


貴之はすぐに追いかけられず、その場のイスに深く座りなおした。



そして、俺たちは茜が倒れた経緯を聞いた。


あと、彼女に起こった過去についても初めて聞いたんだ。


彼女の忘れ去りたかった過去は、両親に捨てられたことじゃなくい。


多分中学時代のイジメのことだって事が判明したのだった。



***


茜はただひたすらに走っていた。


蒼次が話してくれたおかげで、全ての部分が繋がったんだ。


1週間前に階段で話していた『あかね』の話。

あれは、あたしじゃなくて『明音』の話だったんだ。


勘違いしていなかったら、この事件が起こる前に知らせることが出来たかもしれなかったのに。


どうせ貴之たちには全く分からないだろう。

なぜ明音が避けられしまったのか。


その理由は貴之たち王子集団に近づいてしまった妬みからに違いなかった。


まさか、こんな事態になるなんて。

うすうす感じてはいたけれど未然に防げなかった。


あたしと同じような思いをする人を1人も作りたくなかったのに…。


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