AKANE -もう一度、逢いたい-


彼女の見た目だけでなく、心が痛々しかった。


そこにガラッと扉が開けられる。


そして飛んで入って来て茜をかばうように抱きしめた人がいた。


それが裕人くんだった。


彼は私に向けて声を荒げた。


「茜は悪くないんだ!!」


とりあえず落ち着かせてゆっくりと話を聞いた。


その時に初めて茜の家の事情を知った。


この傷は母親の新しい彼氏に殴られた跡だと言っていた。


今までにも、そんなことはたくさんあったらしい。


信じられなくて、何も言えなかった。


それよりも私は先程の裕人くんの態度が異常過ぎたように感じた。


けれど、その時の私は無視したんだ。



そのまま、気が付けば中学1年生も終わりを告げる季節が訪れていた。


そしてここから破滅の道をたどり始めることになる。

そんなこと誰も気づかないでいた。


きっかけは裕人くんの嬉しい報告から始まったんだ。


それはサッカ―の日本ジュニアの合宿に初めて呼ばれたという話だった。


周囲はもちろん大盛り上がりで騒いでいた。


裕人くんを将来のプロサッカー選手として騒ぎ立てる。

誰もがおめでとうと笑顔で迎えた。


それと同時に裕人くんの女子人気も上がる一方だった。


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