AKANE -もう一度、逢いたい-


先生は話を続けたんだ。


「やまがみ あかねちゃんは
悲しいけど転校しました。
みんな、お別れしましょうね」


きっと貴之の心は凍っていたに違いない。


それから来なくなってしまったあかねちゃんの一番前の席はなくなってしまったんだ。



「――それから10年後の
今でも探しているってこと」


蒼次は帰り支度をしながら言う。


「探すって言っても
何も手がかりないじゃん?」

「…それが中3の夏に俺が
母親の話を聞いてしまった」


商店街のパン屋で働く母はいろんな情報をどこからかよく集めてくる。


「…なんて?」

「幼稚園のときに一緒だった
あの『あかねちゃん』。
この町に戻ってきたらしいって」

「それって、もしかして…」

「あぁ。もちろん言った」


そうだ、あの時。

名前以外なにも手がかりは無いのに、学校をサボってまで町中を探し回っていた。


それまでは『あいつなんか大嫌いだ。』しか言わなかったくせに。


あの時、本当に好きなんだなって思った。


あんなにも必死に走っている姿はサッカー以外では見たことがない。


「それでも
見つからなかったってことか」

「そういうことだよ」

「でもまだ諦めてないとか?
振られてるのに?」

「中学に行っても、
高校に行っても探してた」


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