AKANE -もう一度、逢いたい-
こんな奴のどこがいいのか分からない。
貴之も裕人もおかしいよ。
俺はその場で突っ立っていた。
「どうかした?」
後ろから声を掛けられた。
涙ぐんでいた目を拭って振り返る。
そこには明音ちゃんが心配そうにしていた。
「…別に何もない」
「そんなことないでしょ」
「は?」
「だって、
蒼次くん悲しそう」
彼女の言葉に俺はドキッとした。
こらえていた言葉があふれ出しそうだった。
彼女は続けて言う。
「全部、蒼次くんが
抱える必要ないからね」
涙が自然と流れた。
嗚咽を繰り返す。
明音ちゃんは優しそうに笑う。
何も言わないまま俺の背をなでてくれていた。
***
もう試合まで残り3日。
俺は絶対に裕人には負けない。
負けられない。
この手で勝利を掴んだら、茜にちゃんと告白しようと決めていた。
時間が惜しいと思うぐらい熱心に練習を続けた。
そして自主練も終えて、こっそりと1人で非常階段に行く。
ドアを開けて空を見上げた。