AKANE -もう一度、逢いたい-
「貴之!」
蒼次に呼ばれて我に戻った。
俺、どうかしてるよ。
ここに彼女は来ないって分かってるのに。
何に期待しているんだろう。
「なんか余裕みたいだな」
「そんなこと!」
「俺は、
一切気をゆるまない」
「俺だって」
「じゃあ、いつもの
お前を見せてくれよな」
そして再び、裕人は俺を抜かそうとする。
「貴之!」
「止めろ!!」
後方から蒼次と陽平の声がした。
もう抜かされるなんて失敗はしたくない。
これでも一応、摂弥高校のエースだ。
茜と幼い頃の約束だ。
俺がこのチームを引っ張っていく。
「甘い」
「させるかよ!」
俺は力強く食い止める。
そのまま足元に転がったボールを奪い去った。
俺は瞬時にゴールに向けて走り出す。
攻撃を仕掛けていた相手は守りに戻ろうとした。
陽平たちはすぐに攻撃に加わる。
俺は1人、1人と抜き去っていく。
後ろから裕人が追いかけてくるのが分かった。
裕人は足が速いってことは知っていた。