AKANE -もう一度、逢いたい-
・あなたを想うから、こっちを見て
***
試合に俺は負けた。
悔しくて、情けなくて仕方がなかった。
茜のことがあったのもあるけれど、自分の力の無さが一番悔しかった。
俺の全身にあたる雨は痛くて、突き刺さるようだ。
「くそっ」
何度悔しがっても同じ結果だと分かっていた。
そこへ傘をさした茜が、明音ちゃんと共に現れた。
茜がこの試合を見に来ていたことを知って、もっと辛くなった。
「茜、
見に来てくれたんだ!」
裕人が茜に明るく声をかける。
「あのさ、さっそくだけど
話したいことがあるんだ…」
「…話すことなんてない」
「そんなこと
言わないでくれよ」
そう言いながら裕人は茜の腕を引っ張り、人の目につかない場所へ移動していった。
俺は目で彼女を追うだけで引き止める資格がない。
もう俺が彼女にしてあげられることは何もないから…。
彼女の傍にいるのは俺の役目じゃない。
これが一番いい結果だと分かってしても、胸が痛んで仕方がなかった。