AKANE -もう一度、逢いたい-
「だから聞いて欲しいんだ」
「…な、何…?」
もう言葉が出そうにない。
息をするのがやっとで、足も震えだしていた。
「放課後に
俺と逢って欲しい」
「…い…いや…だ…」
「頼むよ。今までの
時間を取り戻したいんだ」
裕人は痛切に訴えかける。
本当は「どうせ償いだ」とか、いろいろと言ってやりたかった。
けれど、そんな余裕は今のあたしにはなかった。
息をするのが精一杯で、呼吸を落ち着かせようとすることで頭がいっぱいだったから。
「俺は茜を
守るって決めたんだ」
「…わかっ…た…」
「あと今度の
日曜日に出かけようよ」
あたしは仕方なく声を絞り出す。
「わか…った…」
あと、もう少し。
その気持ちだけでいっぱいいっぱいだ。
自分が何を言っているのか、相手が何を話しているのか。
目の前にいるのは誰か…。
あいまいな感覚が体中をしめつけていた。
そして、あたしは話を早く切り上げて、その場を後にした。
あたしはフラフラの体のまま、誰にも見つからない隅でこっそりと倒れこんだ。