AKANE -もう一度、逢いたい-
何か言いたいけれど、言葉にすることが出来ないでいた。
「だって貴之くんは
茜ちゃんを諦めるんだから」
そうだ、それでいい。
それが一番いい。
明音みたいにまっすぐな子なら、安心できる。
いつもみたいに「勝手にすれば」って言えばいい。
でも言葉がつまって、何も言えない。
「あたしね、
貴之くんが好きだから」
彼女はあたしが思っていた以上に本気だった。
あたしはひとりで歩みを進める。
「待ってよ」
明音はそのまま走り寄って来るが、あたしは早歩きをする。
「私は、それでも茜と
友達だと思ってるからね」
初めて彼女はあたしを『茜』と呼び捨てにした。
思わず振り返ってしまった。
「茜。ずっと味方だよ」
彼女は優しく笑う。
『あかね』と口元が動いていた。
明音はこれからの貴之を支えていくのだろう。
複雑な気持ちになったんだ。
彼女は貴之を愛してると言う。
それでも友人でいたいとも言うんだ。
貴之なんて、どうにでもなればいい。
明音と付き合えばそれでいい。
そう思うのに、何かが心の中でつまっているんだ。