AKANE -もう一度、逢いたい-
それを見かねた保健の先生はため息をついて大きな声で怒鳴った。
「黙って!」
「「………」」
「ちゃんと3人に話すから!」
後ろでは明音ちゃんも真剣な顔で頷いていた。
先生が話し始めたのは、ちょうど茜が中学3年生の頃。
ちょうど茜が裕人に『関係ない』と言われた後からの話だった。
その話からだったから、裕人は顔をしかめていた。
~中学3年生~
茜は学校を飛び出して、逃げていた。
茜は必死に走って、少し疲れたから足を止めた。
そしてゆっくりと歩く。
無我夢中に逃げ、気付けばラブホ街だったんだ。
「ここ…」
茜はここがラブホ街ということに気付き、逃げ出そうとした。
しかし足を止めて、ある一点を見つめていた。
「嘘…」
目の先にあったのは、茜の父親だった。
あの日、出て行ってから一度も逢わなかった父親。
顔にはしわが刻まれて、白髪も生えていて知っている顔より少し老けていた。
その父親の傍には知らない女の人と一緒に歩いていたんだ。
ショックだった。
すぐにその場から逃げ去った。
私はもう誰も頼ることはできない。
誰もあたしを必要としていない。
私なんて、この世に必要ない。