AKANE -もう一度、逢いたい-


何よりも産んでくれた母親にも言われたじゃない。


『あんたなんて生まなければ良かった』って。


もう、この世に未練はない。

あたしは生きている価値なんてないんだ。


だから…

死んでしまいたい…。


『茜なんか関係ない』と裕人は言う。


『あかねって誰』と貴之は言う。


やっぱりあたしに戻る場所も、居場所もない。


本屋をあとにして、肩を落としながらゆっくりと歩く。


その瞬間だった。


パパーーーーーー!!

クラクションが鳴り響いた。


あたしは訳が分からなくて動けなくて、ただ車が走ってくる方を見る。


モノクロの世界だった。


なぜだろう。

あたしは動いていないのにスローモーションで移動しているように感じる。


視界はゆっくりと倒れて行く。


あたしは動いていると実感した。


そしてモノクロの視界に真っ赤な塊が飛び込んできたんだ。


同時に思考がしっかりとして、重さを感じた。



あたしは赤いモノに触れる。


赤いモノはベタベタとしていた。


重いモノは人だった。


男の人の体から真っ赤な血が流れて止まらなくて、私は声を失った。


< 181 / 311 >

この作品をシェア

pagetop