AKANE -もう一度、逢いたい-
何よりも産んでくれた母親にも言われたじゃない。
『あんたなんて生まなければ良かった』って。
もう、この世に未練はない。
あたしは生きている価値なんてないんだ。
だから…
死んでしまいたい…。
『茜なんか関係ない』と裕人は言う。
『あかねって誰』と貴之は言う。
やっぱりあたしに戻る場所も、居場所もない。
本屋をあとにして、肩を落としながらゆっくりと歩く。
その瞬間だった。
パパーーーーーー!!
クラクションが鳴り響いた。
あたしは訳が分からなくて動けなくて、ただ車が走ってくる方を見る。
モノクロの世界だった。
なぜだろう。
あたしは動いていないのにスローモーションで移動しているように感じる。
視界はゆっくりと倒れて行く。
あたしは動いていると実感した。
そしてモノクロの視界に真っ赤な塊が飛び込んできたんだ。
同時に思考がしっかりとして、重さを感じた。
あたしは赤いモノに触れる。
赤いモノはベタベタとしていた。
重いモノは人だった。
男の人の体から真っ赤な血が流れて止まらなくて、私は声を失った。