AKANE -もう一度、逢いたい-


びっくりして戸惑った。


でもね、私には好きな人がいた。

さっき振られてしまったけれど。


だから返事は決まっている。

ちゃんと断らないといけないよね。


私が好きだったのは貴之くん。

こんなにも愛しいと思えたのは貴之くんだった。


だから、蒼次くんにはちゃんと言おう。


「ごめんなさい」って…



***



あれから三日という月日が過ぎた。


あたしはあの日、確かに涙を流したんだ。

それは想定外だった。


なぜか分からないけれど、スルリと頬を暖かい涙が流れ落ちたんだ。


嬉しいとか、悲しいとかじゃなくて、気が付けば流れていた。


あたし、まだ涙が出るんだ。

感情ってまだ心に残っていたんだ。


頬が濡れると同時に、心も少し潤った気がしたんだ。


(不覚…)


そう思ってしまうほどに。


そしてずっと心にあるものが残っていた。


あの人とちゃんと話をしないといけない。


どうしても彼と決着つけなくてはならない。


だからあたしは思い切って彼を呼び出したんだ。


隣町の懐かしい土手に。


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