AKANE -もう一度、逢いたい-

「違う。
裕人は助けてくれた」


あたしはあなたの優しさを忘れない。


臆病で、何も出来ないあたしに手を差し伸べてくれたのは確かに裕人だった。


手を引っ張って逃げてくれたことも嬉しかったんだ。


いつも守ってくれたのはあなただよ。


「茜はこれから
どうするんだ?」


彼の質問に何も答えられなかった。

だって本当にどうしたいのか分からないから。


「自分のしたいようにしろよ」

「…出来ない」

「またネガティブになってる。
お前の親父も悲しむだろ?」

「…ごめん」


それしか言えなかった。


自分は父親の命を奪って、ここで生きている。


ずっとそれが重荷だった。

誰にも言えないほどの傷だった。


私はもう誰にも甘えたらいけない。

自分で立って、進むしかない。


それがやっと昨日分かったから。


「あたしさ、
裕人に逢えて本当に良かった」

「なんか、昔の茜に
戻ったみたいだな」

「そんなこと…」

「今の茜は素直だよ」


裕人の優しい笑顔で恥ずかしくなった。


小さな声で「うるさい」と愚痴った。


これで少し心が軽くなったような気がする。


あたしはこれから自立しないといけないんだと改めて思った。

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