AKANE -もう一度、逢いたい-


「蒼次の奴、最悪だ」

「違うの!」

「何が?」

「私、蒼次くんに言われてその通りだって思った。ちゃんと分かってたんだ」


そうよ。

本当は分かっていた。


今、目の前にいる茜には敵わないという事を。


どんなにあがいても貴之くんの心の中には茜しかいないって事を。


そして茜だけに向けられる笑顔を好きになったと気付いたんだ。


「蒼次くんに甘えるのは間違ってた」

「そっか…」

「今まで助けてくれたように、また助けてくれると思ってしまっていたんだ」


優しい蒼次くんなら、また手を差し伸べてくれる。


今までのように、何もなかったように笑ってくれる。


今思うと、あれは親切だけではなかった。


愛情を注いでくれていたんでしょ。


あなたの優しさはいつも自然なままだった。


だからつい心を許してしまったんだと思うんだ。


そして、その思いに甘えてしまっていた私がいけなかったんだ。


「私が甘かった!!」

「でも蒼次の言い方も…」

「全部、私を
思っての言い方だよ!!」


絶対にそうに決まっている。


お互い一方通行の恋をしていたから分かるんだよ。


相手の笑顔が大切だからなんだよね。

< 223 / 311 >

この作品をシェア

pagetop