AKANE -もう一度、逢いたい-


私はハッとした。


彼女は貴之のことだけじゃなく、茜の父親のことも言っているのだろうか。


父親も同じように交通事故で死んでしまったから。


「あたしがいるとね、
大事な人がいつもいなくなる」

「…うん」

「あたしのせいで、
危ない目にあってしまう」

「………」


茜はもう一度、空を見て必死に願う。


私が隣にいることも忘れてしまうように。


「お願い、
貴之を連れて行かないで」


私も横で同じように空を見て祈った。


茜は続けて空に願う。


そして誰に向けて願っているのかも。


「連れて行かないで、
お父さん…」


何度も何度も「お願い」と祈り続けていた。


「茜…」


私はそんな茜を見ていられなかった。


「お願い、
何があったのか教えて」


すると茜はゆっくりと全てを話してくれた。


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