AKANE -もう一度、逢いたい-


「明音もあたしから
離れた方がいいよ」


口調は優しいのに心が痛い。


「絶対に離れないからね」


私は茜をぎゅっと抱きしめた。


茜の体は凍りそうなぐらいに冷たかった。


「…冷たい」

「このまま肺炎になって
死んでしまいたいな」

「簡単に
死ぬとか言わないで」


私は自分の着ていた上着をかけてあげる。


そしてもう一度ぎゅっと抱きしめる。


「貴之くんは、
茜を守ったの」

「………」

「茜のお父さんと一緒で、
守ってくれたんだよ」

「………」

「だから守ってもらった命を
簡単に捨てないでよ」

「……明音は
貴之みたいなこと言うなぁ」

「貴之くんなら絶対に
そう言ってくれてるよ」

「……そうだよね」


茜は私の胸の中で大声を上げて泣き続けていた。


私は小さな背中を優しくさすっていた。


貴之くん、茜を助けて。


あなたじゃないと助けられない。


死にそうだった茜をぎりぎりに救ったのも貴之くんだよ。


茜の心をもう壊さないで。


貴之くんが必要なんだよ。

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