AKANE -もう一度、逢いたい-


なぜ貴之が車に引かれてしまったのか。


手術が終わってから茜は何も隠すことなく、俺と陽平に話してくれた。


仕方がなかった事件かもしれない。


けれど、やっぱり辛かった。


「嘘だろ…」


そうつぶやくことしか出来なかった。



俺はあの事件以降、サッカー部のキャプテンとして頑張るしかなかった。


チームメイトを不安にさせないためだった。



週末に行われた練習試合も貴之がいないだけで何かが足りない。


相手は摂高よりは強くないはずだ。


けれどもチームは負けてしまった。



貴之を含めた俺たちを見に来てくれていた監督たち。


やっぱり内容の薄い試合にがっかりしていた。


やっぱり貴之がいないと、くじけそうだった。



それからチームメイトは貴之について一言も話すことなくなった。


誰一人として、貴之がいないから負けたなんて言わなかった。



けれども学校に行くと貴之について取り上げられていた。


貴之の噂はいつもささやかれていた。


ファンの皆が心配してくれているのも分かるけれど、ほっといてもらいたかった。


陽平もきっと同じだろう。

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