AKANE -もう一度、逢いたい-
そして今日も貴之のいない一日が始まる。
やはり貴之の噂はささやかれていた。
「蒼次くん!」
「明音ちゃ…」
俺が一人登校していると明音ちゃんが話しかけてくれた。
「やっぱり来ないか」
「うん、茜は
まだ来たくないみたい」
「そりゃ、そうだよな」
俺は大きなため息をついた。
茜はあの事故のあとから学校に一度も来ていない。
明音ちゃんとも話した結果、ゆっくりと学校に来れるようにするのが一番いいということになった。
今は、心が疲れているから。
そして昨日の貴之の見舞いに行った時の話をした。
「昨日、
見舞いに行ってきたんだ」
「どうだった?」
「いつもと変わらない」
貴之の様子はまだ悪い状態のままだった。
意識は戻らず、呼吸もしていない。
呼吸装置を外してしまえば、すぐにでも死んでしまうだろう。
「…いつになったら
戻ってこれるだろうな」
「…早く
戻ってきてほしいね」
俺たちは貴之が死にそうでも、そのことは口に出さなかった。