AKANE -もう一度、逢いたい-


戻ってくる可能性が低くても嘘をつく。


「…蒼次くん、
無理しないでね」

「…無理してないよ」

「嘘。1人で
抱え込もうとしてる気がする」


明音ちゃんは天然なのに意外と鋭い。


「…分かった」


俺は承諾するしかなかった。


俺がまだ頑張ろうと思えるのは彼女のお陰だ。


明音ちゃんも辛いはずなのに、いつも笑顔で助けてくれる。


俺の心も少し軽くなっていた。


すると明音ちゃんは真剣な顔で言う。


「貴之くんの
噂のことだけど…」

「あぁ、そのことか」


貴之が事件に巻き込まれて、悪い噂がすぐに流れてしまった。


俺や陽平の周りでは誰もが心配をしてくれていた。


けれど俺たちに聞こえないように噂だけが広がっていた。


全て明音ちゃんが教えてくれるまで気付かなかった噂話だ。


「事件に
遭わせた元凶は茜か…」

「うん」


貴之が命の危機に遭ってしまった原因。


それは全て悪いのは河﨑茜だという噂だ。


茜が絡んでいるのは嘘ではない。


けれど、それは悪い方向に向かっていた。

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