AKANE -もう一度、逢いたい-
・失いたくない存在
あの事件から一ヶ月が過ぎたなんて考えられない。
あたしは1人で自分の部屋に閉じこもっていた。
今でもあの日の光景が鮮明に思い出される。
真っ赤な血が見えて、貴之の重みを感じた。
気が付けば病院に運ばれた。
何も言えないままで、何が起こったのか自分でも分からなかった。
そして知らぬ間に何度も願った。
お父さんに連れて行かないでと…。
明音がいてくれたから最悪は免れた。
もう死にたいとは思わない。
けれど、どうしたらいいのか今でも分からない。
自分の答えが見つからなかった。
ずっと部屋に閉じこもったままだった。
貴之の見舞いにも行くことが出来なかった。
病院にいる貴之を見たくない。
貴之の家族に合わす顔もなかった。
何もかもあたしが悪いから。
罪悪感はやっぱり拭えないんだ。
寒い今日は、チラチラと雪が舞っていた。
儚い雪が窓から眺めていたんだ。
「今日も寒いな」
けれど頭の中は、ずっと貴之のことばかりだった。
あれからも何度も涙を流し、笑うことはなかった。
あたしの頬は涙で乾かない。