AKANE -もう一度、逢いたい-


「あと勝手に
幼なじみにしないで」

「俺たち幼なじみだろ」


明るく言うな。


「あんたは…」


なぜか、一呼吸分の時が流れる。

なぜか言葉が詰まってしまった。


「ただの他人」


冷たい、ひどい奴だと思ってもらって構わない。

もう昔のあたしは存在しない。

早く消えてよ。


すると貴之は明るい調子で勝手なことを言い始めた。


「茜、他人だから友達にも
幼なじみにもなれるんだよな。

「…だから何」

「他人と関わるから
自分が出来てくるんじゃないか」

「………」

「他人だったら
俺たち恋人にもなれるよな」


あたしは1人で非常階段から立ち去った。


何も言わないまま。

どうして、こんなにポジティブなんだろう。


でもあたしの心には全く響いてこなかった。


ウザい。

あたしはこの10年間と同じように1人きりでいい。

その方が悩みも少なくていい。

自分のことだけ考えていられれば十分だ。


だから早くあたしを忘れろ。

今すぐ見放してくれた方が楽に済むから。


それがあたしのためでもあり、あんたのためにもなるんだ。

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