AKANE -もう一度、逢いたい-


貴之。

貴之が教えてくれたんだ。


優しく出来る方法を。

感謝を伝える術を。


あたしの優しさは分かりにくいらしい。


不器用だし、素直になるのは苦手だ。


それは今も変わらない。


けどね、貴之が教えてくれたんだよ。


勇気をもつことを。

相手を思いやることを。


そして言葉は伝えなくちゃならないことを。



そこへケータイが鳴り響く。


プルルルル
プルルルルル…


蒼次は急いでケータイに出ると、あたしにも分かるほど焦っていたんだ。


「分かった。
すぐに向かう」


電話を切ると、あたしを見て言ったんだ。


「貴之の容態が
急変したって!!」


誰もが言葉を失った。


あたしの心臓がドクンと跳ねた。


「いそいで向かうぞ!」

「う、うん」


スローモーションで時が流れた。


3人とも急いで、焦っているのが分かる。


客観的に見ているはずなのに、心臓のドクドクした音がやけにうるさく感じた。

< 271 / 311 >

この作品をシェア

pagetop