AKANE -もう一度、逢いたい-
貴之。
貴之が教えてくれたんだ。
優しく出来る方法を。
感謝を伝える術を。
あたしの優しさは分かりにくいらしい。
不器用だし、素直になるのは苦手だ。
それは今も変わらない。
けどね、貴之が教えてくれたんだよ。
勇気をもつことを。
相手を思いやることを。
そして言葉は伝えなくちゃならないことを。
そこへケータイが鳴り響く。
プルルルル
プルルルルル…
蒼次は急いでケータイに出ると、あたしにも分かるほど焦っていたんだ。
「分かった。
すぐに向かう」
電話を切ると、あたしを見て言ったんだ。
「貴之の容態が
急変したって!!」
誰もが言葉を失った。
あたしの心臓がドクンと跳ねた。
「いそいで向かうぞ!」
「う、うん」
スローモーションで時が流れた。
3人とも急いで、焦っているのが分かる。
客観的に見ているはずなのに、心臓のドクドクした音がやけにうるさく感じた。