AKANE -もう一度、逢いたい-
「茜も早く行くぞ!」
蒼次の声で少しだけ我に返った。
よく見るとあたしの全身が震えていた。
ガタガタと取り乱していた。
今なんて言った?
貴之が危ないなんて、どうしたらいい?
分からないよ…
「とりあえず行くぞ」
あたしは蒼次に抱えられて、タクシーに乗り込む。
もうそこからどうやって病院に向かったのか分からない。
ただずっと心臓はバクバクして、ガタガタと震えていた。
横で落ち着くようにずっと明音が背をさすってくれていた。
病院に着いて、すぐにICUに通された。
呼吸器をつけ、管に繋がれている貴之。
そんな貴之を見ていられなかった。
何度も何度もあの日のことを思い出す。
あたしが呼び出さなければと何度思ったことだろう。
もっと素直になっていればと何度思ったことだろう。
あの日、あの場所じゃなくでもよかったんじゃないだろうか。
何度も何度も思ってしまうんだ。
そして交差点越しに見た貴之の笑顔。
幼い頃から変わらない笑顔だった。