AKANE -もう一度、逢いたい-
「…本当?」
「はい。
でもまだ危ない状況です」
医者は深刻そうな顔をしていた。
まだ良くなってはいない。
意識もなくて呼吸もしていない。
「いつ目覚めるか
分かりません」
「…そうですか」
「そもそも
目覚めないかもしれません」
貴之が目覚めるのは明日かもしれない。
けれど数年後かもしれない。
それともこのまま死んでしまうかもしれない。
まだ危機的状況は打破されていない。
「貴之のこと
ずっと待ってるから」
あたしは優しく声をかけた。
「貴之はあたしの心が
溶けるまで待っていてくれた」
そう、あたしの凍りついた心をゆっくりと溶かしてくれた。
「あたしに出逢うまで
ずっと待ってくれていた」
ずっと、あたしを信じてくれていた。
だから今度はあたしが信じる番だよね。
「ちゃんとここにいるから」
あたしはそう言って、優しく微笑んだ。
貴之。
あたしはあなたが帰ってくるのを信じて待つよ。
たとえ何年かかってしまっても。