AKANE -もう一度、逢いたい-


貴之の容態も少し落ち着いた頃。


あたしも少しずつ落ち着き始めていた。


さっきまでの取り乱した自分を思い出しては顔が赤くなる。


(…恥ずかしい)


そう思わずにはいられなかった。


そこに貴之のお母さんがみんなの飲み物を持って来てくれた。


「良かったら飲んでね」


貴之のお母さんに遭うのも10年振りだった。


昔に比べれば、やはりしわが刻まれていた。


持って来てくれたペットボトルを一人ずつに手渡す。


そう言えばさっき取り乱した時、お母さんもいたよね。


それも忘れるぐらい貴之しか見えていなかったあたし。


本当に恥ずかしい。


「茜ちゃん、久しぶりね」

「…ご無沙汰してます。
あとさっきはすみません」

「なんだ、そんなこと?
気にしなくていいわよ」


明るくお母さんは言ってくれた。


「むしろ茜ちゃんのように貴之を思ってくれてる子がいて安心した!」

「え?」


あたしは何が言いたいのか聞き返すと、笑いながら教えてくれた。


「だってあの子、
結構モテるでしょ?」

「あ、はい」

「なのに彼女を1人も作らないから心配だったんだよね」

「…そうなんだ」

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