AKANE -もう一度、逢いたい-


「貴之はあの日、
待ち合わせ場所に来てくれた」


ちゃんと来て、あたしを見て笑ってくれたよね。


なんて言えばいいか分からなくて、ドキドキしたんだよ。


「でもその時だった。あたしをかばったせいで、事故に遭ってしまった」


静まり返ったまま、誰もが聞いてくれていた。


「倒れた貴之を何度も
呼んだけど返事はなかった…」


また、大事な人を失くしてしまった。


しかもあたしなんかをかばって…。


「あたしのことなんて守らなくていい。何度も何度も思ったよ」


明音が泣きながら、こっちを見てくれていた。


ここからでもはっきりと分かった。


あたしも涙が止まらなくって、でもちゃんと伝えたくって。


その思いでいっぱいいっぱいだった。


「あたしが死ねばいいと
何度も何度も思った」


嘘じゃない。


あたしの命をあげるからって神様に誓った。


お父さんに連れて行かないでと願い続けたんだ。


「あたしに大きな罰を与えてほしいと何度も思いました」


どうして貴之なのって、神様の意地悪って…。


「でも違った。この命を大切にしなくちゃいけないと思ったんです」


貴之、そうでしょ?


大切に守ってくれた命を大事にしなくちゃいけないよね。

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