AKANE -もう一度、逢いたい-


「これが事件の真実です」


あたしの想いを伝えることで分かってくれると思った。


貴之を愛していたから、貴之を傷つけることなんてしない。


わざと事故に遭わせるなんて絶対にしない。



その気持ちを分かって欲しかったから、自分の言葉で伝えたかった。


きっと、みんな分かってくれると信じてる。


誰にでも人を愛するという気持ちがあるから。



人を信じること。


人を想うこと。


人を愛するということ。



全て彼が身をもってあたしに教えてくれたことだったね。


あなたが教えてくれたから、今あたしはここにいる。


まだ自分のことを全て受け入れることは出来ない。


やっぱり嫌いなものは嫌いだって思うときもあるよ。


でも、あなたに逢えて思ったの。


人って、こんなにもあたたかいものだって。


友だちって、悪くないかもしれないって。



「これで送辞を終わります」


あたしの言葉に誰も何も反論をしないようになっていた。


前を見て、凛と通る声で言う。


「在校生代表、河﨑 茜」


自分の名前をもう一度、ハッキリと告げる。


そしてカンカンカンと階段を下り、自分の席へと戻って行った。


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