AKANE -もう一度、逢いたい-



波乱な卒業式が終わった。


こんなにも波乱な卒業式は有り得ないに違いない。


そして在校生のあたしたちは運動場で散らばっていた。


卒業生が先生や同級生、後輩たちと写真を撮ったり、おしゃべりをしたりして最後の学校生活を過ごしていた。


快晴の今日は、天気も祝福してくれているようだった。


「…いい天気だなぁ」


あたしは1人つぶやく。


卒業式を終えてからもいろんな人からの視線がささる。


まぁ見られても仕方がないかとも思っていた。


何より全てを話したことで、何人かは分かってくれたようだった。


それだけでいい。


本当のことを知ってもらいたかっただけだから。


「大変だったね」


さりげない言葉だけど、今のあたしには宝物のような言葉を、一部の人は言ってくれた。


優しく言ってくれる子も中にはいた。


その一言がこんなにも嬉しかったんだ。


「茜、気持ちよさそうだな」

「…まぁね、
何より快晴だからな」


あたしはもう一度、空を見上げた。


お父さん、茜の頑張っていた姿、見てくれた?


心の中で問いかけて1人で笑った。


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