AKANE -もう一度、逢いたい-


「…本当に?」

「茜、本当だよ!」

「本当に…また……」


涙がぼろぼろとこぼれ落ちて止まらない。


何度拭っても、止まらなかった。


「また…逢える…グスッ」


また逢える。


きっと逢える。


貴之に逢うことが出来る。


これほど嬉しいことはない。


貴之、貴之って、空を見上げて語り掛けなくてもいい。


貴之は病室で必死に生きているから。


青く澄み渡る空見上げた。


涙を流しながら、目をつぶる。


そして祈った。


「おい、茜。
空にもう貴之はいねーぞ」

「…知ってる」

「だったら…」

「お父さん、ありがとう」


あたしは祈りを続けた。


貴之を返してくれてありがとう。


あたしを思って助けてくれてありがとう。


茜はこれからも必死に生きていくよ。


お父さんが大好きだったこの場所で。

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