AKANE -もう一度、逢いたい-
・鮮やかに散る花火
***
時は過ぎ、ついにやってきた7月最後の日。
さっき講習もやっと終わった。
「貴之、次パス練するぞ!」
「おう」
あとは部活に励んで花火に向かうだけだ。
陽平はずっと時計ばかりちらちらと見て気にしていた。
時間が近づく度にチェックする回数も増えていく。
蒼次は笑うことしか出来なくて、隅っこでこっそりと腹を抱えて笑っていた。
「3,2,1,0!
お先に帰りまーーす!」
それだけを言って走り去る。
陽平は去り際に一言、
「貴之、蒼次も急げよな!」
たったそれだけ。
ほかにも言うことはまだまだあるはずなのに。
せめて先輩に、お疲れ様でしたぐらい言えよな。
待ち合わせ時間は7時頃。
地元の神社で待ち合わせすることになっている。
それから見晴らしのいい川岸まで見に行こうと決めていた。
俺は人ごみを避けてその待ち合わせ場所に到着した頃。
そこで待っていたのは準備万全の陽平だけだった。
「なんだ。お前かよ」
「俺で悪かったな」
きっと早めに用意して、明音ちゃんと抜け出すつもりだったのかもしれない。
浅はかな考えだ。