AKANE -もう一度、逢いたい-
・心は動揺しない
***
8月に入って数日が過ぎていた。
セミの鳴き声がハンパなく大きい。
あたしは毎朝8時に起きる習慣になっていた。
貴之はあたしに宣戦布告をして帰って行った。
それに対しても何も思わない。
悔しいとか、苦しいとかの熱い感情。
あたしの過去で涙を流す貴之。
それでも心が動かない。
それもきっと、あの時に時間を止めたから。
この先、心なんて壊れたままでいい。
もうどうにもならないと知っているから。
ピンポーン
真夏の朝から家のチャイムが鳴る。
誰が来たのかすぐに分かってしまった。
「はーい」
「おはよ!」
めんどくさいあたしがドアを開ける。
予想通りそこにいたのはワンピース姿の明音だった。
「朝早くから何か用?
あたし、忙しいんだけど」
「話したくて来た!」
「それだけだったら
帰ってくれない?」
無理やりに閉めようとしたドアに必死でしがみついてくる。
意外に力強い。
その根気に思わず負けてしまった。
何もない殺風景な部屋にあげると珍しそうにウロウロとしていた。
「お茶一杯飲んだら帰ってよ」
コポコポコポ仕方なく、お茶をグラスに2人分注ぐ。
そしてテーブルに持っていく。