AKANE -もう一度、逢いたい-
時間は過ぎ去る。
茜はバイトを終えた帰り道だった。
頭の中にはずっと明音の『素直な気持ち』をぐるぐると考えてしまっていた。
貴之なんて大嫌いって言葉を何度も繰り返しに呟いてみる。
忙しくバイトを終えて、気が付くともう夕方の5時を過ぎてしまっていた。
確実にサッカーの試合は終わっている。
2時からだって言っていたから。
対戦相手って小谷高校だよね。
そこが相手ならなんとか勝ってるかな。
…ってどうしてこんなことをあたしが気にする必要があるのよ。
そういえば何であたしはこの土手を歩いてるんだ。
「一番、大嫌い」
あたしは大きな溜息をつく。
きれいで真っ赤な夕日はあたしの胸の奥を刺激した。
「茜!!」
後ろから呼ばれた名前。
聞き覚えのある声色。
間違いであってもらいたい。
「茜ってば!!」
一度も振り向かずに歩くスピードをあげた。
そうだよ、知らない振りをしよう。
「逃げるなよ!!!」
結構離れていたはずの距離は縮み、あたしは一度も振り向かずに走り出した。
すると後ろの方で走る音が聞こえ始めた。
追いつかれないように、もっともっと必死に走る。
でも足音は一気に近づき、一度だけ後ろを振り向く。
その瞬間、自分の足につまずいて派手にこけてしまった。
憎いよ、この運動音痴。