AKANE -もう一度、逢いたい-


「俺もさ、10年前と
すごく変わっただろ?」

「確かに」


昔はただの泣き虫。


「背も伸びたし、
カッコよくなった」

「………」

「何よりもモテる」

「そういう言い方、
陽平って奴と一緒だね」

「…それだけは勘弁して下さい」


そんなにも嫌いな奴なのか。

そして結局何が言いたいのか全く掴めない。


「話って何?ないなら帰って」

「10年も経つとさ、やっぱり
どこか変わってくるよな」


あたしはドキッとした。


「周りの環境とか、
関わる人とかにもよるけどさ」

「…だから何?」


この一言を返すだけで精一杯だった。

あたしの強がりの部分。


蒼次に悟られないように必死に隠して言う。


「でも、貴之は
何も変わらないだろ?」


鼓動がドクドクと激しく脈打つ。

あたしが貴之に再会して思っていたことを蒼次も思っていたんだ。

あたしは顔を上げられなかった。


「あいつ、全日本にもジュニアとして何度も呼ばれるようになったんだ」

「…そう」

「サッカーのことがずっと
大好きだって顔でプレーしてる」

「…そうだね」

「その時の輝く顔も変わらない」


そう思ってるところも、あたしと一緒だった。

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