AKANE -もう一度、逢いたい-
「貴之が今も変わらないのは
どうしてだと思う?」
「…分からない」
そう、それが分からない。
10年前もみんなでサッカーをしてる時が楽しかった。
毎日、泥まみれになって。
あの時と同じ顔。
同じ笑顔のままだ。
「理由は『茜』。お前だよ」
「…あたし?」
何も分からなかった。
過去にあたしが何をしたのかさえも分からない。
「それは自分で
思い出してみてよ」
急な思い出話。
封印したい思い出話の箱を再び開けろと蒼次は遠まわしに言うのだ。
分からないなら仕方がない。
また今度教えてあげると蒼次は言いたげだった。
花火の時のことといい、油断していいのかどうかさっぱりだ。
「でも成長するって難しいな。変わった方がいいのか、変わらない方がいいのか」
「変わった方がいいよ」
即答する。
あたしの進んできた道は正しかったはずだから。
「茜に何があったのか
俺全く興味ない」
「………」
「でもさ、これからを考えると
味方はいた方がいいだろ?」
「味方なんていらない」
「あっそ」
落ち着いたままの蒼次はそれから何も言わなかった。
理由も聞かないし、押しつけることもしなかった。
ただ、沈黙のまま時間だけが進んだ。