AKANE -もう一度、逢いたい-
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気が付けば文化祭まで、あと1週間をきっていた。
クラスごとの準備もあとわずかで皆忙しそうだ。
特に俺のクラスでは女子たちが張り切って執事服を作ってくれた。
今、試着してるけれど女子たちの声はうるさいほどにテンションが高い。
ついには違うクラスまで覗きに来ては失神を起こしてしまっていた。
「貴之。お前も
向こうに笑って手を振って!!」
嬉しそうにスマイルをばらまくのはやっぱり陽平だった。
1週間後の文化祭でたくさんの女子を呼び込むための作戦らしい。
渋々と俺も振り返す。
「きゃあぁぁぁ~~!!!」
「お嬢様、文化祭の日に、また逢えるのを楽しみにお待ちしております」
なんて笑顔で言う蒼次も結構ノリ気だ。
「お待ちしています」
「きゃああああああ~~!!!!」
再び熱気は上がる。
それを最後にクラスのドアは閉ざされた。
たった数分間だったのに、正気が失せるほど俺は疲れてしまった。
外の空気を吸うために誰も使っていない非常階段へ向かった。
ガチャ
「…なんか、笑える」
非常口の扉を開けた俺にいきなりそう言った。
「茜」
「何それ。
全然に似合ってない」
先に非常口に来ていた茜はクスッと一瞬だけ笑った。